輸血検査・血液製剤のオーダについて 

福井大学医学部附属病院輸血部規定(2010年7月1日現在)

当大学輸血部への血液製剤のオーダの仕方、取り決め等に関するページです


< 目 次 >
  1. 血液製剤の請求
  2. 血液型検査(ABO, Rh(D))と不規則性抗体スクリーニング
  3. クロスマッチ(輸血部実施対象のもの)・Type&Screen(T&S)オーダ
  4. 緊急輸血と時間外輸血
  5. 血液製剤払い出し後の取り扱い
  6. 自家採血輸血(院内採血輸血)
  7. 自己血輸血
  8. 輸血に伴う副作用の報告
  9. 白血球除去フィルターの使用
  10. 血漿交換・血液浄化療法・血液成分分離(血小板、末梢血幹細胞等)
  11. 血液製剤への放射線照射
  12. 適切な血液製剤の使用に向けて
  13. 転送患者の輸血について
  14. 手術待機血と手術部への血液払い出しについて


<はじめに−輸血の同意書について>
 平成9年(1997年)4月より、同種血輸血に際して、輸血同意書なくしては診療報酬が請求できないことになった(自己血輸血でも同じと考える)。当大学においては、「輸血同意書」を用意し、輸血をすることが予測される場合には、あらかじめ患者に輸血が必要な理由・利点・副作用等について説明をし同意を取ることが義務づけられた。単に診療報酬上の理由というだけでなく、患者の基本的人権を尊重するというインフォームドコンセントの根底に流れている理念を、医療の中で実践する習慣を身につける必要がある。
 同意書は、連続した一連の医療行為につき1回取るのを原則とする。たとえば外科手術では1回の手術につき1回、血液疾患では1回の入院ごとに1回を目安にする。それ以外のケースでは、輸血を必要とする状態がいったん無くなれば、次に輸血を開始するときには同意書を取る必要がある。

<A.血液製剤の請求>
  1. 輸血用血液製剤は、赤血球濃厚液(RCC-LR)、濃厚血小板(PC-LR)、新鮮凍結血漿(FFP-LR)の3種類のみを知っていれば、輸血を必要とされるほとんどの臨床症例に対応できる。
  2. 血液製剤の請求は、原則輸血予定日の2日前午前10時までに、オーダリングシステムにてオーダする。
  3. 休日が間にある時は、その日数分だけ提出期限を繰り上げる。
  4. オーダ締め切り日時は製剤によって異なる。締め切り日時を過ぎると「輸血部へ電話連絡して下さい。」等のメッセージが表示されるのでメッセージに従ってオーダすること。
  5. オーダ画面で、必要に応じて「交差試験」、「T&S」を選択すると、バーコード付き採血ラベルが発行される。採血ラベルを貼った検体を提出する。
  6. 血液製剤は使用当日に輸血部で払い出しを受ける。使用予定を過ぎても受け取りがないものは輸血部の備蓄とする。
  7. 血液製剤払い出し前の輸血中止については、速やかに輸血部まで連絡をし、中止のオーダをいれる。

<B.血液型検査(ABO, Rh(D))と不規則性抗体スクリーニング>
  1. 輸血を前提とした患者について実施する。平成13年度よりオーダリングシステムを導入している。
  2. バーコード付き採血ラベルを貼った患者血液5ml(EDTA入り採血管)を、原則として輸血予定日より2日前の午前10時までに提出すること。
  3. 血液検体は室温のまま冷却せずに提出すること。
  4. 初回検査の時は、不規則性抗体スクリーニング検査も同時にオーダするのが望ましい。
  5. 不規則性抗体スクリーニング検査の有効期限は採血日を1日目として7日間。
  6. 血液型確定には2回以上の異なる時点での採血が行われ、その検査結果が一致している事が必要。
  7. 患者検体の取り違えを防ぐ目的で、原則として血液型検査の採血とクロス血採血は異なる時点に行うこと。(同時には採血をしない)
  8. Rh陰性、不規則抗体陽性患者には、血液型検査結果カードをラミネート化して発行する。電子カルテの他科依頼に検査結果及び注意事項を入力する。

<C.クロスマッチ(輸血部実施対象のもの)・Type&Screen(T&S)オーダ>
  1. 原則として血液製剤請求とともにクロスマッチのオーダがあったもの(クロス用血液添付)について実施する。
  2. クロスマッチは、原則として平日の日勤帯(8:30〜17:00)に限り受け付ける。当日オーダする場合は、まず輸血部技官に電話で連絡をしてからおそくとも17:00までにはクロス用検体を提出する。
  3. 大量輸血(15単位以上)、稀な血液型(輸血部より通知)、不規則性抗体スクリーニング陽性(輸血部より通知)の場合のクロスマッチは輸血部に連絡後に申し込むこと。
  4. クロスマッチ適合製剤は、血液バッグに適合票を添付する。(T&S適合製剤は、血液バッグにT&S適合証を添付する。)
  5. (付)クロスマッチ検体提出量:抗凝固剤の入っていない採血管に以下の量を採血して提出する。検体は輸血予定日前3日以内に採血したものが望ましい。交差適合試験の有効期限は採血日を1日目として7日間。
  6. T&Sオーダの場合は、血液型検査用検体(EDTA入り5ml)1本を提出する。時間外は、T&Sオーダのみとする。ただし、不規則性抗体スクリーニング陽性の場合にはクロスマッチを行う。
  7. クロスマッチ・T&S検査をオーダした場合、保存用検体のバーコードラベルが発行される。保存用ラベルを貼った検体(分離剤入り)4mlをクロスマッチ・T&S検体といっしょに提出する。保存用検体は遠心後、最低2年間冷凍保存(-20℃以下)する。(輸血後肝炎遡及調査の為)
(付)
輸血予定量 検体提出量
5単位まで 5ml
6〜10単位まで 10ml
16〜30単位まで 15ml
31〜50単位まで 20ml

<D.緊急輸血と時間外輸血>
  1. 使用当日に申し込んだ分でも、輸血部、血液センターに在庫がある場合には当日供給可能である。時間内(平日8:30〜17:15)における血液請求は輸血部に連絡すること。
  2. 時間外(平日17:15〜翌朝8:30、土曜日曜祝祭日)に血液製剤が必要になった場合、輸血当直者(PHS 5642)に連絡すること。

<E.血液製剤払い出し後の取り扱い>
  1. 血液製剤は原則として輸血部で保管し、病棟や手術部では保管しない。特に血小板製剤は時間内・時間外を問わず、保管が必要なときは輸血部の恒温振とう機(22〜24℃)で保管する。血液製剤は、輸血当日に輸血部に来て受けとる。
  2. 何らかの理由で輸血が中止になった場合、返却可能な製剤は速やかに輸血部に返却すること。
  3. 使用されず、返却もできない血液製剤はいわゆる「破棄血」となる。処分は輸血部で一括して行うので、輸血部まで届ける(自己血や院内採血の血液でも同様)。
  4. 使用しない血液製剤の費用を患者に請求することはできず、病院の損失となる。さらに善意のドナーからの血液を無駄にすることになるため、合理的な輸血計画を立てるよう努力する。
<F.自家採血輸血(院内採血輸血)の不推奨>
  1. 院内で献血者を募り採血して輸血をする、いわゆる生血輸血の必要は、ほとんどないことが厚生労働省より示されている。採血に要する医師の労力・安全性検査の不備の可能性を考えれば、輸血部としては推奨できない。
  2. 親子・兄弟・親戚が血液の提供を申し出たとしても、それが安全であるという保証はどこにも無い。輸血後GVHDの確率はむしろ高くなり危険であることを銘記する。
  3. 実施する際はクロスマッチはもちろん、輸血後GVHDの可能性を考えγ線照射をすることが必須となる。

<G.自己血輸血の推奨>
  1. 待期手術で患者に貧血がない場合、あらかじめ患者の血液を採血し保存しておいて手術時にもどす(貯血式)自己血輸血は、輸血に伴う副作用の多くを回避でき、コスト上のメリットもある。
  2. 各診療科では自己血輸血の適応拡大のための努力をすることを推奨する。輸血部はこれにできるだけ協力し、採血も含めて輸血部の責任において実施している。
    (自己血輸血マニュアルへ)
  3. 自己血の保存は使用当日まで輸血部が責任を持つ。電子カルテのオーダリングシステムよりオーダする。輸血部での自己血保存は、原則として「自己MAP赤血球+自己FFP」のかたちで保管する。全血希望の場合はCPDA採血を行う。
<H.輸血に伴う副作用の報告>
  1. 輸血に伴う重篤な副作用(血圧低下、喘鳴、呼吸困難、ショック等)が発生した場合、直ちに輸血を中止して必要な措置をとり、可及的速やかに輸血部まで連絡すること。重篤な副作用が発生した場合は、厚生労働大臣に報告しなければならない。
  2. これらの副作用については日本赤十字中央血液センターで原因検索を行うので、残った血液製剤(またはそのパイロットチューブ)を、患者血液とともに輸血部に提出すること。患者血液量はEDTA入り血液7〜10mlと抗凝固剤の入っていない血液7〜10ml必要。この際、副作用報告書の記入を血液センターより依頼されるので、原因究明のため協力すること。
  3. 発熱や蕁麻疹等の副作用は、適切な処置をとれば輸血中止の理由とはならないことが多い。このような軽度の副作用でも輸血部では実体を把握しておきたいので、必ず輸血部まで報告をしていただきたい。
  4. 電子カルテの輸血副作用調査テンプレートに必要事項を入力する。輸血実施日、発症時間、原因製剤、副作用の程度、副作用の内容
  5. B型肝炎、C型肝炎、その他の感染症において輸血が原因と疑われる際には、どれだけ期間がたっていても輸血部へ連絡をすること。

<I.白血球除去フィルター使用>
  1. 特殊な製剤以外は、保存前白血球除去製剤に切り替わったため、白血球除去フィルターは不要となった。白血病、再生不良性貧血、慢性腎不全等同一の患者に対して、10 回以上の反復輸血が行われる場合(行われることが予想される場合を含む。)に保険請求できる。ただし、血漿製剤中の白血球の除去を目的とするものは保険請求できない。輸血時には、適切な輸血セットを使用すること。
<J.血漿交換・血液浄化療法・血液成分分離(血小板、末梢血幹細胞等)>
  1. 血漿交換・血液浄化療法用装置として、持続式血液成分分離装置として現有する。
  2. これらの機器使用に際しては日時の予約が必要である(TEL、E-Mail等を利用する)。
  3. 血小板アフェレーシスでは、供血者に関する検査・連絡等は各診療科の主治医の責任において行う。機器の運用は経験者(輸血部担当者・第一内科医員及び大学院生)の指導のもとで、診療科の主治医が行う。
  4. 末梢血幹細胞の採取については、末梢血幹細胞移植の施行がその時点で可能と判断できる症例について、できるだけ早期に輸血部担当者まで連絡を入れてコンサルテーションを受けること。機器の運用は前項目に準ずる。
  5. 血液浄化療法・血漿交換に関しては主治医と機器販売メーカー担当者との協力が必要なので、予定が決まれば輸血部担当者まで連絡すること。
  6. いずれの場合にも、保険診療の請求を忘れないこと。

<K.血液製剤への放射線照射>
  1. 輸血後GVHDの予防に関して、現時点で最も有効な対策は血液製剤への放射線照射であり、この目的で輸血部にはγ線照射装置(ガンマセル)を設置してある。超緊急以外では、新鮮凍結血漿(FFP-LR)を除くすべての輸血用血液製剤に放射線照射を行う。
  2. 血液製剤は原則、照射血を購入している。しかし、未照射血が納入されることもあるので、輸血部で放射線照射をする。放射照射量は1回6分31秒間(15 Gy) を照射する。(放射線照射ガイドラインを参照する)
  3. ガンマセルの使用は、病院の放射線取り扱い者としての正式な登録者であり、かつ輸血部長の許可を得ることが必要である(毎年更新)。使用許可者の名前は所定の場所に掲示することとし、記載の無い者の使用は禁止する。
  4. 使用許可を得ていない者が早急にガンマセルを使用する必要が生じた場合、輸血部に相談すること。使用法を誤るとガンマセルの故障の原因となり、他患者に多大な障害を与えることになる。
<L.輸血療法の適正化へ向けて>
 厚生労働省薬務局は毎年血液製剤使用の適正化に関するガイドラインを発行している。このガイドラインは輸血部に用意してあるので、希望者は申し出ること。
  1. 他人の血液を輸血することは多かれ少なかれ種々の同種免疫反応があるということであり、医学的に望ましいものは少ない。このデメリットを越える有益性があり、かつ輸血以外の方法では代用できないとき、はじめて輸血が考慮される。
  2. ほとんどすべての輸血は成分輸血で対応できる。採血後 72 時間以内の、いわゆる「新鮮血」が必要とされる場合もまずない。全血製剤(人全血液CPD)のオーダは推奨されない
  3. 赤血球濃厚液(RCC-LR)(保存前に白血球及び血漿の大部分を除去してMAP保存液を加え作成)が赤血球成分輸血製剤の主力となった。また赤血球濃厚液はもともと血漿成分の大半が取り除かれている。血漿成分に対する過敏症等を避ける目的以外には、「洗浄赤血球」をオーダする理由はなく、自己免疫性溶血性貧血でも適応があるのは限られたケースのみである。
  4. 全血の代用として、新鮮凍結血漿(FFP-LR)と赤血球濃厚液の「抱き合わせ輸血」をすることは避ける。FFP-LRには蛋白(アルブミン)補給や栄養補給の意義はなく、高いNa濃度(170〜180mEq/L)であることに注意する。FFP-LRを凝固因子を補う以外の目的で使用することは不適切な使用法である。
  5. 一般に手術時の出血が 600 ml 以内であれば無輸血で手術可能とされる。外科手術に際しては根拠のある計算方法で必要輸血量を予測し、どんぶり勘定で多めの血液をオーダするのは慎む。
  6. このため、MSBOSの適応、Type & Screen(T&S)の推進に輸血部は努力している。また、全手術を対象に、輸血が必要になるまで赤血球濃厚液は輸血部に保管し、必要時に手術部へ払い出す「待機血制度」を導入している。
<M.転送患者の輸血について>
 I. 他院から、患者が転送されてくる場合
  1. 輸血用血液とともに患者が転送されてた場合は、必ず患者の血液型検査を行う。既に輸血が行われて転送された場合は異型輸血が行われてきた可能性も考慮しながら適合血を選択する必要がある。
  2. 血液型検査や交差試験を行わずに輸血すると、過誤輸血の原因になることがあるため、持参した血液は原則的に用いない。当院で準備した血液を使用する。
  3. 持参した血液は、原則的に搬送元の病院に返却する。
  4. 超緊急の場合は、血液型が判明するまでは、O型RCC-LR、AB型FFPを使用する。
  5. 血液型の判明した時点で同型の血液に切り替える。
  6. 血液不足などの事情で持参した血液を使用したい場合は、必ず当病院で交差試験(又はT&S検査と製剤の血液型検査)を行った後、主治医の責任で使用する。この場合、当病院で輸血したという記録は残せない。搬送元の病院に、使用状況を知らせる。持参された血液の保存状態が不明確なものは、使用しないこと。
 II. 当院から、患者を搬送する場合
  1. 搬送中に使用する分のみ交差試験を行い、出庫伝票および適合票をつける。
  2. 赤血球濃厚液は保冷剤の入った発砲スチロールの容器に入れ、血液の保存状態に注意して搬送する。
  3. 使用の有無を確認できるようにしておく。
  4. 未使用の場合は、血液製剤を当病院に返却してもらう。保存状態が不明確なものは、廃棄処分にする
  5. 使用を確認し、コストをとる。
<N.手術待機血と手術部への血液払い出しについて>
  1. 手術予定患者で、手術当日払い出し希望のある赤血球濃厚液はAM8時30分までに照射しておくこと。照射単位数は、できるだけ最小限になるよう心がける。払い出しは原則的には、必要になった時点で払い出す。
  2. 手術中に血液が必要になれば、輸血部に連絡する。必要単位数を輸血部職員が手術部に搬送する。
  3. 手術待機血は、翌日には解除し、備蓄に入れる。翌日以降必要な場合は新たにオーダする。