がん集学的治療

食道疾患

 

癌腹膜転移に対する腹腔内温熱化学灌流療法 (CHPP)

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CHPP ,温熱化学療法,腹膜転移,腹膜播種,癌性腹膜炎,胃癌,大腸がん,卵巣癌,

腹膜偽粘液腫,悪性腹膜中皮腫,肺癌,胸膜転移,癌性胸膜炎,持続温熱腹膜灌流

腹膜転移とは

癌が治りにくいのは転移するからです.消化器の癌の転移には,リンパ節転移,血行性転移と,腹膜転移があります.リンパ節はリンパの流れに沿って転移する癌を元の癌の近くに止めようとするので,手術によって原発巣と転移リンパ節を一緒に取ることで治癒切除が可能となります.血行性転移は,血流に乗って肝臓や肺などに転移するもので,1個か2個の転移なら切除できます.多発した場合は切除できませんが,転移した臓器の血管に抗癌剤を注入する動注化学療法などがある程度の効果を挙げています.腹膜転移とは,消化管の粘膜から発生した癌が消化管の壁を突き破っておなかの中にこぼれ落ちて広がる転移形式です.分化度が低い,すなわち悪性度の高い種類の癌にみられます.悪名高いスキルス胃癌はその代表で,卵巣癌,日本では少ないのですが大腸癌でもみられます.これらの腹膜転移には効果的な治療法がありませんでした.肉眼的にとらえられないようなほんのわずかな細胞がこぼれただけでも手術後に腹膜再発を来します.腹膜偽粘液腫,悪性腹膜中皮腫などは悪性度は低いのですが,腹膜全体に広がるのでこれも有効な治療法がありませんでした.

われわれの取り組み

福井医科大学第一外科では 1985 年からこれらの腹膜病変に対して持続温熱腹膜灌流療法 (CHPP) を独自の方法で開始しました.これは手術によって腫病巣をリンパ節とともに切除した後でおなかをあけたままで直視下に行うもので,開腹式腹腔内温熱化学灌流療法といいます.これにより従来問題になった,過熱による腸管の穿孔や縫合不全などの危険な合併症が激減し,なおかつ腹腔全体の効果的な加温が可能になり, CHPP の成績が向上しました.いまでは我々の始めたこの開腹法が世界中で行われ,欧米各地でも有効な治療法として臨床研究が進められています.なを,福井大学医学部では内外の知識者からなる倫理委員会の承認を経て,患者様への十分な説明と承諾の基にこの治療を行っています.

対象

低分化の胃癌で腹膜転移を有するものまたは腹腔内の洗浄細胞診で癌細胞を認めるもの.大腸癌で腹膜転移を有するもの.ただし,切除不能な高度のリンパ節転移を有する場合,肝臓,肺,その他血行性転移を有するものは適応ではありません.卵巣癌の腹膜転移に対しては本学婦人科教室と共同で治療を行っています.また,呼吸器外科においては,胸膜転移を有する肺癌症例に対して胸膜内温熱灌流を行って効果を挙げています.

方法

手術でできるだけ腫瘍を取り去った後,腹腔内に温熱で作用が増強される,シスプラチン,マイチマイシン,エトポシドの3種類の抗癌剤を加温した生理食塩水4 L にいれてポンプで腹腔内とリザーバーの間で循環させます.温度を調節して,腹腔内を 42 度から 43 度に維持します.癌に対する温熱効果を PC で計算しながら,十分な効果が得られた時点で終了します.術後は呼吸不全,循環不全,腎不全の合併を予防するために高容量の輸液療法を行うために集中治療室で3日から4日の呼吸,循環管理が必要です.

成績

ここにスキルス胃癌と腹膜転移大腸癌の成績を示します.

図1 スキルス胃癌では腹膜転移がなくてもほとんどの症例で腹膜転移再発をします. CHPP を併用することで明らかに予後の改善が認められます.

図2 スキルス胃癌で明らかな腹膜転移を認める場合,原病巣とリンパ節転移を切除したうえで CHPP を行えばより長期の生存が得られます.

図3 大腸癌の腹膜転移症例でも CHPP により長期の延命が可能であり, 40% 以上の5年生存率が得られています.