<タンデムマス・スクリーニング>
タンデム質量分析計による新しい新生児マス・スクリーニング

スクリーニング装置


<2009年12月までの結果(厚労省研究班)>

 総スクリーニング新生児数:1,039,971
 <発見患者>
 (有機酸代謝異常症)
  プロピオン酸血症______24名
  メチルマロン酸尿症_____11名
  グルタル酸尿症1型_____5名
  3MCC欠損症 ________ 6名
  複合カルボキシラーゼ欠損症_2名
  イソ吉草酸血症_______3名
 (脂肪酸酸化異常症)
  MCAD欠損症 ________ 8名
  VLCAD欠損症 ________8名
  SCHAD欠損症 ________1名
  グルタル酸尿症2型_____4名
  CPT-1欠損症 ________3名
  CPT-2欠損症 ________3名
  カルニチントランスポータ異常症____4名
 (アミノ酸代謝異常症)
  シトリン欠損症_______13名
  フェニルケトン尿症_____19名
  シトルリン血症1型_____ 5名
  アルギニノコハク酸尿症___ 1名


発見患者分布

<パイロットスタディの説明>

 タンデム質量分析計(ESI-MS/MS)を用いると、新生児のろ紙血に含まれるアシルカルニチンとアミノ酸を一斉に測定することが出来ます。

 アシルカルニチンの分析により、多くの有機酸代謝異常症や脂肪酸酸化異常症を診断することが出来ます。有機酸代謝異常症や脂肪酸酸化異常症とは、アミノ酸や脂肪酸の代謝過程の酵素に生まれつきの問題があり、体内に有毒な有機酸が蓄積(酸血症)したりエネルギー産生が障害されたりするため、脳障害や突然死がみられる一連の疾患です。

 この方法で診断を予定している有機酸代謝異常症・脂肪酸酸化異常症は、メチルマロン酸尿症、プロピオン酸血症、イソ吉草酸血症、グルタル酸尿症I型&II型、3ヒドロキシ3メチルグルタル酸尿症、複合型カルボキシラーゼ欠損症、3-メチルクロトニルCoA脱水素酵素(3MCC)欠損症、極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症、中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症、三頭酵素欠損症/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症、カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-I(CPT-I)欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-II(CPT-II)欠損症、カルニチントランスポータ異常症です。

 これらの疾患の最も重症のタイプでは、新生児期に急速に症状が悪化し死亡することがありますが、多くは食事療法を含めた早期治療により脳障害を予防したり、突然死を予防したりすることが出来ます。

 また、アミノ酸の分析により、現行マススクリーニング対象疾患の3種のアミノ酸代謝異常症だけでなく、さらに、高アンモニア血症により脳障害を来す疾患(シトルリン血症1型、アルギニノコハク酸尿症)も見つけることが出来ます。重症なタイプでは治療が困難な場合もありますが、移植医療や遺伝子治療を視野に入れた治療の取り組みが行われています。
 その他の対象疾患としては、高チロシン血症I型とシトリン欠損症があり、一部の検査機関でのみ試験的にスクリーニングしています。

 これらの有機酸、脂肪酸やアミノ酸の代謝異常症は、各々一つ一つは出生何万から何十万人に一人の割合でしか見つからない希な疾患ですが、この新しいスクリーニング法では多くの疾患を対象に一斉分析しますので、総合的なスクリーニング効率は良いと考えられます。実際、これまでのスクリーニング研究では約八千人に一人の率で患者さんが見つかっています。

 なお、この新しいマススクリーニング検査では、現行の先天代謝異常症などのスクリーニング用の血液ろ紙が使用出来ます。
 また、この新しいマススクリーニング検査は、保護者によるパイロットスタディへの参加の同意が文書で得られた新生児について行います。


<平成21年度厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)分担研究>

研究分担者 重松陽介(福井大学医学部看護学科)

「タンデムマスによるスクリーニングの効果の検討」

<研究要旨>
 わが国におけるタンデムマス・スクリーニングの有用性を実証するための試験研究は、平成21年度には、福井大学、島根大学、及び札幌市・東京都・大阪府・九州地区の現行マススクリーニング実施機関に、大阪市のマススクリーニング実施機関が加わり、更に石川県も実施地域として参加して、引き続き実施された。
 2009年1月から12月にスクリーニングされた新生児は228,279と昨年度から更に増加し、28例の対象疾患患児が発見され、累積受検者数は約104万新生児、累積発見患者数は120例となり、対象疾患患児の頻度は昨年と同様の約1/8,670新生児と計算された。
 疾患別頻度は、プロピオン酸血症が1/43,000と最も多く、次いでフェニルケトン尿症が1/54,700、シトリン欠損症1/80,000、メチルマロン酸血症1/94,500、MCAD欠損症とVLCAD欠損症が1/130,000であった。
 脂肪酸酸化異常症全体の頻度は1/33,500であり、新生児期発症の重症型グルタル酸尿症2型1症例以外は、本年も早期発見・治療により順調に成長発達しており、試験研究地域外で未診断の脂肪酸酸化異常症患児の突然死が経験される中、乳児突然死予防の観点からも有意義なスクリーニングと考えられた。
 本年度は特に大阪市・大阪府でスクリーニング体制が更に整い分析数が増え多くの患者が発見された。
 検査法に関しては、我が国で合成されたglutarylcarnitine及び3-OH-isovalerylcarnitine標品を用いて、新生児スクリーニング研究開発センターからタンデムマス・スクリーニング用標準濾紙血の供給が開始され、C5DC、C5OH、C14、C18などの内部標準を含む新しい分析用キットでの分析の精度管理が可能となった。
 対象疾患についても暫定的に見直しが行われ、それぞれの対象疾患スクリーニング指標のカットオフ値の標準化に向けた取り組みを踏まえ、タンデムマス・スクリーニングの全国展開の基礎が出来たと考えられた。


(「小児のマススクリーニングのページ」に戻る)

(HomePageに戻る)